サウナマシーン寺田

元サラリーマンによるサウナ絵日記

日系メーカーで勤務するうえでの覚悟

 

 現在の大手日系メーカーは
まるっきり新しい事業を生み出すことは出来ない。未来を考えても新事業・新製品を創造することは不可能かもしれない。

 大手の大半はブランドイメージという伝統工芸気質の鎖に縛られ、がんじがらめになっている。このイメージを人生をかけてでも守りたい、、これが日系メーカーで勤務するうえでの覚悟だ。

 

 各社の技術的な革新がしばしばニュースで話題になるが、それは小手先のもので、本質的な変化が問われることは殆ど無い。伝統を守る職人、そしてそれを継承する若手。職人がたきの人材が好まれ、育てられ、増やされ、柔軟性に乏しい組織を形成している。

 この組織構造は、特定の組織における個別の話ではなく、業界の全般として当てはまる傾向がある。すなわち、日系製造業全般の創造性が失われている。めぼしい技術革新は、過去に既に起こされてしまった。

  このような典型的な日系メーカーが欲している人材は、年長者(会社に長く在籍している人間)の話を訊き、その通りに物事を実行することが出来る人間だ。革新的な考えを持っている者や、前衛的なアイディアを生み出す者は嘲笑され、揶揄され、弾かれる組織形態が完成している。

 

 この組織形態は、なにも一概に悪いものではない。先に述べた様に、伝統工芸なのだから、過去に作られた美しい規律や慣習を守ろうとすることは当然である。

  伝統工芸は、時代によって姿を変える。例えば、昨今では伝統工芸をモチーフにした漆ぬりのスマホケースや、染めもののトートバックが流通している。

  このようなものは、一見時代に合わせるかのような柔軟性をみせておきながら、頑固な根っこを持っている。利便性を追求するならば、スマホケースは強化樹脂の方が優れているし、トートバックはナイロン製の方が軽くて頑丈ではないだろうか。

 

 伝統を流行と掛け合わせると、どうしても伝統のエゴが顔を出してしまうものだ。
漆ぬりのスマホケースなど、「伝統工芸の存在を忘れないでほしい」という職人のエゴが生んだ傑作だろう。ひょっとしたら欲しているのは職人本人だけかもしれない。

 利回りのいい商品を企画・販売するうえでは、いかに勝率を高めるか、すなわち万人に受けるにはどうすればいいかという戦略構築が重要だ。しかし、伝統工芸は万人に受ける必要は無い。一部のファンにむけてだけ生産すればいいからだ。俄然独自性(ブランド製)が重要視される世界である。

 

 ブランドイメージを守るためには、製品の大幅なモデルチェンジは許されない。
メーカーで新製品、新規事業が誕生する際はブランドを守るために、社内で何百、何千にも及ぶ検証の工程が重ねられる。このようにして誕生した製品にはユニークさの欠片はなく、大人の事情と呼ばれるエゴイズムがそこら中に散りばめられている。

 

 日系メーカーで働くということは、ブランドイメージを守るために働くということと同義だ。

  働くうえで必要なのは「この会社が好きだ」という思い。例えば、「幼少期にこのメーカーの製品で劇的な体験が起こった、命を救われた、私はこの会社で努力して、
同じような実体験を消費者に届けたい、、」このような思いはメーカーに入社する上で非常に全うで美しい志望理由だ。

 皆さんの周りにはそのようなモノは有っただろうか。私の周りには、無かった。